そもそも、なぜ公務員になったか

先に出発点を書いておきます。学生の頃の僕が公務員を目指した一番の理由は、正直に言えば「安定」でした。景気に左右されにくく、給与も福利厚生もしっかりしている。周りも「公務員になれたら安心だよね」と話していて、それが一つの理想形に見えていました。

同時に、「地域の役に立つ仕事がしたい」という気持ちも本物でした。この2つを持って市役所に入り、9年働いた。その結論が、以下です。

公務員になって良かったこと

安定の正体は、ボーナスと有給だった

一番大きいのは、やはり安定です。ただ、在職中はその「安定」が具体的に何なのか、正直よく分かっていませんでした。フリーランスになって失って、初めて中身が見えました。

ひとつは、ボーナスです。年2回、決まった時期に、ほぼ確実にまとまった額が入る。当たり前だと思っていましたが、フリーランスにボーナスは存在しません。案件がなければ収入はゼロです。「働いていれば、半年に一度まとまったお金が必ず入る」——これがどれだけ精神的な土台になっていたかは、なくなって痛感しました。

もうひとつは、有給休暇です。公務員時代は有給が取りやすく、子どもの行事にも比較的出られました。今は違います。休めばその分、収入が直接減る。「収入を気にせず休める」というのは、想像以上に大きな安定でした。

家庭を持つと、この安定のありがたみは一段増します。生活の不安が少ないことは、公務員の紛れもない魅力です。フリーになった今だからこそ、そう断言できます。

地域の役に立っている実感があった

市役所の仕事は、市民の生活に直結しています。窓口対応、施設管理、イベント運営——担当は様々でしたが、「ありがとう」と直接言ってもらえる場面がありました。自分の仕事が地域を支えているという実感は、確かなやりがいでした。

幅広い経験ができた

部署が変われば仕事も大きく変わります。最初は戸惑いましたが、その分、幅広い知識が身につきました。窓口で鍛えられたコミュニケーション、内部事務で身につけた正確に作業を進める力——どちらも、エンジニアになった今でも活きています。

公務員になって後悔したこと

挑戦の機会は、自分で作らないと生まれにくい

決められた業務を正確に進めることが求められる場面が多く、大きな挑戦の機会は限られていました。部署にもよりますが、3〜4年経って業務に慣れた頃、「このまま定年まで働く自分を、想像できるか」という問いが頭に浮かぶようになりました。最初は贅沢な悩みだと思っていましたが、同じサイクルが毎年繰り返されるたび、その違和感は少しずつ大きくなっていきました。

自分の「市場価値」を考えない9年間だった

在職中は、転職も市場価値もほとんど意識しませんでした。でも辞めることを考え始めたとき、はっと気づいたのです。「自分は、公務員以外で通用するスキルを持っているのか?」

この不安が、プログラミングを学び始めた理由の一つでもあります。市場価値という視点を持たずに過ごした9年間は、振り返ると少し怖さも感じる期間でした。

「安定」そのものが目的になっていた

学生の頃の目標は「安定した仕事に就くこと」でした。それ自体は悪くありません。ただ働くうちに、「安定していること」と「自分がやりたい仕事であること」は別だと気づきました。僕には、挑戦しながら成長できる環境の方が合っていたようです。

良かったことと後悔は、表裏一体だった

振り返ると、良かったことと後悔は、同じ事実の裏表でした。

「決められた業務を正確に進める」環境は、安定した収入をくれた一方で、挑戦の機会を狭めていた。「転職を意識せず働ける」安心感は、市場価値を考えない期間も生んでいた。

どちらかが正しくて、どちらかが間違いなのではありません。ある時期まではその環境が自分に合っていて、ある時期から別の環境が必要になった——それだけのことだったと思います。

これから公務員を目指す人・辞めるか迷っている人へ

目指す人へ。「安定しているから」だけで決めるのは、少しもったいないかもしれません。安定は大きな魅力ですが、それだけでは長く働くモチベーションにならないこともあります。「自分はどんな働き方をしたいか」も一緒に考えておくと、数年後に僕と同じ問いに立ち止まらずに済むかもしれません。

そして、今まさに辞めるか迷っている人へ。僕は辞めましたが、それは「公務員が悪い仕事だから」では決してありません。実際、辞めて失ったボーナスと有給のありがたさは、この記事に書いたとおりです。安定を手放す覚悟があるか、そして手放してでもやりたいことがあるか——判断するのは、そこだと思います。実際に僕がどう決断したかは、別記事(公務員を辞めてフリーランスになって分かったこと)に詳しく書いています。

まとめ

公務員になって良かったのは、安定した収入と福利厚生(その正体はボーナスと有給でした)、地域に貢献できる実感、そして幅広い経験。後悔したのは、挑戦の機会が少なかったこと、市場価値を考えなかったこと、安定だけを判断基準にしていたことです。

どちらも、実際に9年働き、そして辞めたからこそ言えることです。公務員という仕事を否定するつもりは、まったくありません。大切なのは、「自分に合った働き方」を、その時々で選び直していくことだと、今は感じています。